特別縁故者制度

「相続人がいないまま親族が亡くなった。生前ずっとお世話をしていたのに、この先どうなるのだろう」
そんなご相談を最近続けていただいています。実は、法定相続人がいない場合でも、生前に特別な縁があった方は、家庭裁判所に認められれば財産を受け取れる制度があります。特別縁故者に対する財産分与という手続きです。
同居していた内縁関係の方はもちろん、通院の付き添いや入院時の身元引受人を務めていたご親族・ご友人、生前親しく交流のあった知人の方も対象になり得ます。血縁関係の有無ではなく、生前どれだけ密接な関わりがあったかが問われる制度です。
一方で、この制度には注意すべき落とし穴があります。手続きが正式に始まる前の段階で、故人の自宅を片付けたり、貴金属など価値のある物を処分してしまったりすると、後の審判で不利に働くことがあるのです。「良かれと思ってやったこと」が、思わぬ形で足かせになるケースを実務でも目にしてきました。
どこまでなら今すぐ動いてよいのか。預貯金や弁護士費用はどう扱えばよいのか。生命保険金の受取人になっている場合はどうなるのか。こうした具体的な疑問には、Q&A形式でまとめた詳しい解説ページをご用意しています。
特別縁故者に対する財産分与|よくあるご質問
相続人のいない方が亡くなり、生前に身元引受人や身の回りの世話をしていた親族・知人が「今後どうすればよいか」を相談されるケースが増えています。実際のご相談でよくいただく質問をQ&A形式でまとめました。
Q1. 相続人がいない親族が亡くなりました。生前お世話をしていた遠い親族でも、財産を引き継ぐことはできますか?
法定相続人がいない場合、家庭裁判所に認められれば、生前特別な縁があった方(特別縁故者)に財産の全部または一部が分与される制度があります。
同居していた内縁関係の方だけでなく、通院の付き添いや入院時の身元引受人を務めていたなど、生前に密接な関わりがあった親族・知人も対象になり得ます。
Q2. 費用はどのくらいかかりますか?
事案の内容によって異なりますが、当事務所の費用の目安は次のとおりです。
- 着手金:一律22万円(税込)
- 報酬金:分与が認められた場合のみ発生(経済的利益に応じた料率制。分与が認められなければ0円)
- 予納金:特別縁故者の申立てに先立つ相続財産清算人選任手続きで、家庭裁判所に納める費用。財産の内容によりますが、30万円を下回ることはほぼなく、不動産の解体が必要なケースなどでは予納金額が大きくなることが想定されます。
Q3. 手続きが正式に始まる前の今の段階で、やってよいこと・やってはいけないことはありますか?
相続財産清算人が選任されるまでは、「今の状態を悪化させない範囲の対応(保存行為)」は問題ありませんが、「売却・廃棄などの処分行為」は避けていただく必要があります。清算人が選任されるまでは、特別縁故者候補者自身に法的な管理権限が発生しているわけではなく、あくまで事実上の対応にとどまる点にもご留意ください。
- 家具・家電・衣類などの処分:貴金属や価値のありそうな品を先に処分してしまうと、後から選任される清算人の権限と抵触し、「勝手に処分した」という評価を受けかねません。特別縁故者の審判でも不利に働く可能性があります。明らかなゴミ以外は、写真だけ撮って残しておくのが安全です。
- 庭の手入れ:換気や草取り、簡単な清掃といった保存行為にあたる対応は問題ありません。実施日と内容を写真・メモで記録しておくと、後の説明に役立ちます。
Q4. 亡くなった方の預貯金を、今後の生活費や手続き費用として使ってもいいですか?
現時点では使えません。
亡くなった方の預貯金は「相続財産法人」として扱われており、先に使ってしまうと後々問題になるほか、特別縁故者としての評価にも影響しかねません。財産を譲り受けられるかどうかは、この先の裁判所の手続きを経て判断されるため、それより前に使うことは避ける必要があります。
Q5. 弁護士費用を、亡くなった方の預貯金から支払うことはできますか?
原則としてできません。
依頼した時点ではいったんご自身で費用をご負担いただき、将来的に財産分与が認められた段階で、そこから回収していただく形になります。ここは依頼を検討するうえでのメリット・デメリットの分かれ目になる部分です。
Q6. 亡くなった方の生命保険金の受取人に、自分(または他の親族)がなっていました。どう扱えばよいですか?
生命保険金は受取人固有の財産であり、相続財産には含まれません。相続人としての地位とは無関係に、受取人の方がそのまま受け取ることができます。
ただし、税務上は注意が必要です。生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は、相続人が受け取る場合にのみ適用されます。
特別縁故者は定義上相続人ではないため、この非課税枠は使えず、受け取った保険金は全額が課税対象になります。さらに、被相続人の配偶者・一親等の血族以外が財産を取得する場合は、相続税額が2割加算されます。特別縁故者はこの2割加算の対象になるケースが多く、通常の相続よりも税負担が重くなる可能性があります。具体的な税額は税理士にご確認ください。
遺言作成が一番効率的

ただ、特別縁故者への申立ては、いわば最後の手段です。時間も費用もかかり、財産分与が認められる保証もありません。もし相続人以外の方に確実に財産を渡したい事情があるなら、遺言書を作成しておく方が、はるかに確実で早い道です。
一人でも法定相続人がいれば、特別縁故者制度自体が使えなくなります。生前お世話になった方への感謝を形にしたいなら、遺言でその意思を先に示しておくことをおすすめします。
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