後妻や異母兄弟から「相続放棄してほしい」「印鑑証明書を送ってほしい」と言われても、法律上、応じる義務は一切ありません。相続放棄は家庭裁判所への申述によってのみ成立し、他の相続人の要求や口頭の約束で決まるものではありません。
- 1. 「相続放棄してほしい」と言われても、応じる義務はありません
- 相続放棄は、他の相続人が決められるものではありません
- 口頭で「わかりました」と答えただけでは、相続放棄にはなりません
- 相続放棄の要望を断っても、あなたの相続分が減ることはありません
- 「あの時放棄するって言ったじゃないかっ💢」と言われても
- 要望されても署名も押印もしない。サインして押したら回復は難しい。
- 2. 相続放棄と混同されやすい3つの手続があります
- 「相続放棄書」という表題でも、家庭裁判所の手続とは限りません
- 4つの手続の違いを一覧で確認する
- 「相続分の放棄」と「相続分の譲渡」に注意
- 相続分皆無証明書(特別受益証明書)という書式に注意
- 遺産を受け取らなくても、借金の負担だけ残ることがあります
- 3. 相続放棄の求めによく言われる主張と、その根本
- 「手続に必要なので、印鑑証明書だけ送ってほしい」
- 「今日中に押印しないと、手続が進まない」★相続にクーリングオフはありません
- 「ほかの相続人は全員、相続放棄している」
- 「父の面倒を見たのは私だ」「長年疎遠だった人に権利はない」
- 4. なぜこんなことを言ってくるのか。
- なぜ、相手方は急いでいるのか
- 不動産の名義変更を急ぐ事情がある場合
- 生前の預金の動きに触れられたくない場合
- 5. 相手方に代理人がついている場合の対応
- 6. 相続放棄には「3か月しかない」と急かされたときの正しい理解
- 起算点は死亡日ではなく、自己のために相続の開始があったことを知った時
- 熟慮期間の伸長を家庭裁判所に申し立てられます
- 財産調査が終わらないまま、結論を出す必要はありません
- 単純承認とみなされる行為への注意(遺品の処分・預金の払戻し)
- 7. 相続に強い弁護士があなたの盾になります
- 相手方との連絡窓口をすべて引き受けます
- 弁護士費用の目安
- 着手金
- 報酬金
- 日当・実費
- 8. ご依頼者の声に、当事務所の取り組みが表れています
- 「弁護士に聞くのは大げさ…」と思っていませんか?
- 9. 当事務所は、相続に関するご相談をLINE・電話で無料でお受けしています
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本記事では、まず何をすべきかという行動の順序を中心に、届いた書類の見分け方、急かされたときの正しい理解を解説します。
「相続放棄してほしい」と言われても、応じる義務はありません
相続放棄は、他の相続人が決められるものではありません
後妻や異母兄弟から「相続放棄してほしい」と言われたとき、まず理解しておくべきことがあります。
相続放棄をするかどうかは、相続人であるあなた自身が決めることであり、他の相続人が一方的に決められるものではないという点です。
相続放棄は民法で定められた手続であり、家庭裁判所に対して申述するという本人の意思表示によってのみ成立します。
誰かに「放棄してほしい」と要求されたからといって、あなたにその要求に応じる法的な義務が生じるわけではありません。相続人としての権利は法律によって保障されており、他の相続人の意向や都合によって奪われることはないのです。
口頭で「わかりました」と答えただけでは、相続放棄にはなりません
話し合いの場やその場の雰囲気に押されて、つい「わかりました」「それでいいです」と口頭で答えてしまうことがあります。しかし、これだけでは法的な相続放棄は成立しません。
相続放棄は、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出し、受理されることによって初めて効力が発生する手続です。口頭でのやり取りや、遺産分割協議の場での発言だけでは、家庭裁判所を通した正式な相続放棄には該当しません。相手方がこうした口頭での了承を録音したり、後日「本人も了承していた」と主張する材料にしようとする場合もありますが、法的な効力がない以上、慌てて発言を変える必要はありません。
相続放棄の要望を断っても、あなたの相続分が減ることはありません
「相続放棄をお願いされたのに断ったら、関係が悪化して不利になるのではないか」と不安になる方も少なくありません。しかし、相続放棄を断ったこと自体によって、あなたの法定相続分が減ったり、遺産分割協議において不利な立場に置かれたりすることはありません。
あなたの相続分は民法によって定められており、他の相続人の感情や要求によって変動するものではありません。断ることを理由に不利益を受けるいわれはなく、むしろ安易に応じてしまうことで、本来受け取れるはずの財産を失う結果になってしまいます。
「あの時放棄するって言ったじゃないかっ💢」と言われても
「あの時放棄するって言ったじゃないかっ💢」と言われても放棄する義務が生じることはありません。
相続放棄を要求してきた人とのやりとりで気不味い思いをしたくないというご不安は、弁護士をあなたの代理人として窓口にすることで消し去ることができます。
相手方とのやり取りは、すべて弁護士が代わって行います。あなたは日々の暮らしに戻り、ときおり届く経過のご報告に目を通しながらお待ちいただくだけです。遺産のお受け取りに至るまでの手続も、弁護士が最後まで進めます。
要望されても署名も押印もしない。サインして押したら回復は難しい。
相続放棄書や遺産分割協議書、相続分皆無証明書といった書類への署名や押印を求められた場合でも、その場で対応する必要はありません。書類の内容を十分に確認し、必要であれば専門家に相談したうえで判断することが重要です。
「今すぐ決めてほしい」と急かされることもありますが、いったん持ち帰り、内容を検討する時間を確保することは、相続人として当然の権利です。保留すること自体が不利益になるわけではなく、むしろ十分な検討をせずに署名・押印してしまうとその書面の内容で権利関係が変動します。
この場合、あとでやっぱり撤回するということは大変な労力がかかりますし、実現すること自体が極めて困難です。
相続放棄と混同されやすい3つの手続があります
後妻や異母兄弟から「相続放棄してほしい」と言われ、何らかの書類が同封されていた場合、その場で署名・押印する前に、まず書類の正式名称を確認してください。「相続放棄」という言葉が使われていても、実際には法的な意味がまったく異なる書類であることが少なくありません。
「相続放棄書」という表題でも、家庭裁判所の手続とは限りません
法律上、正式な「相続放棄」とは、家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出し、家庭裁判所がこれを受理する手続を指します。

ところが、実際に相続人間でやり取りされる書類には「相続放棄書」「遺産放棄証明書」といった表題が付けられていても、家庭裁判所を一切介さない私文書であるケースが多くあります。このような私文書に署名・押印しても、法律上の相続放棄の効力は生じません。ただし、その書類の内容次第では、遺産分割協議の合意書としての効力を持ってしまう場合があるため、注意が必要です。
4つの手続の違いを一覧で確認する
「あなたが遺産を受け取らない」という結果だけを見れば同じでも、手続の性質によって、借金の扱いや撤回の可否はまったく異なります。
相続放棄は、家庭裁判所に申し出て、相続人の立場そのものから抜ける手続です。
相続分の放棄は、相続人のまま、自分の取り分だけを手放す意思表示です。
相続分の譲渡は、自分の取り分を他の人に譲り渡し、話し合いから抜ける方法です。
遺産分割でゼロ取得は、協議の結果として、取り分をゼロと決める合意です。
表は横にスクロールできます。
| 相続放棄 | 相続分の放棄 | 相続分の譲渡 | 遺産分割でゼロ取得 | |
|---|---|---|---|---|
| 手続 | 家庭裁判所への申述 | 他の共同相続人への意思表示 | 譲受人との合意 | 協議書への署名・押印 |
| 根拠 | 民法938条 | 明文なし実務上の運用 | 民法905条が前提 | 民法907条1項 |
| 期限 | 相続を知ってから3か月 | なし | 遺産分割まで | なし |
| 相続人の地位 | 初めから相続人でなかったとみなされる | 相続人のまま | 相続人のまま分割手続からは離脱 | 相続人のまま |
| プラスの財産 | 取得できない | 取得できない | 取得できない | 取得できない |
| 借金の支払義務 | 支払う必要はない | 支払う必要がある他の相続人と「払わない」と取り決めても、債権者には主張できません | 支払う必要がある同左 | 支払う必要がある同左 |
| 撤回・取消し | 受理後の撤回は不可ただし詐欺・強迫・錯誤などを理由とする取消しは可能(民法919条2項)。家庭裁判所への申述が必要です | 意思表示の瑕疵を主張する余地あり | 意思表示の瑕疵を主張する余地あり | 錯誤・詐欺による取消しの余地あり民法95条・96条 |
| 次順位の相続人 | 相続権が移る第2、第3順位へ | 移らない | 移らない | 移らない |
| 遺留分侵害額請求 | できなくなる | 別途検討の余地あり | 別途検討の余地あり | 別途検討の余地あり |
この表で最も重要なのは「借金の支払義務」の行です。右の3つは、遺産を1円も受け取らないにもかかわらず、借金だけは法定相続分に応じて支払わなければなりません。届いた書類がこの3つのいずれかであれば、署名する前に必ずご確認ください。
「あなたが遺産を受け取らない」という結果だけを見れば同じでも、手続の性質によって、借金の扱いや撤回の可否はまったく異なります。混同したまま話を進めると、意図しない不利益を受けることになりかねません。
この表で最も重要なのは「借金の支払義務」の行です。
右の3つは、遺産を1円も受け取らないにもかかわらず、被相続人の借金は法定相続分に応じて支払わなければなりません。他の相続人との間で「借金は長男がすべて払う」と取り決めていたとしても、その合意を債権者に主張することはできず請求を受けた場合支払いは免れません。
「相続分の放棄」と「相続分の譲渡」に注意
相手方から送られてくる書面には、「相続分放棄書」「相続分譲渡証書」という表題が付されていることがあります。いずれも家庭裁判所に提出する書類ではなく、相続人間でやり取りされる私文書です。
相続分の放棄とは、遺産に対する自分の取り分を放棄する意思表示です。相続人としての地位そのものは残るため、遺産は受け取れないにもかかわらず、被相続人の債務については法定相続分に応じた負担を免れません。
相続分の譲渡とは、自分の相続分を他の相続人や第三者に譲り渡すことです。譲渡によって遺産分割手続からは離脱できますが、この場合も債務の負担は残ります。
いずれも「相続放棄」と一字違いの表題であるにもかかわらず、借金の扱いという最も重要な点で結論が正反対になります。表題の類似に惑わされず、書面の中身と提出先を必ず確認してください。
相続分皆無証明書(特別受益証明書)という書式に注意
後妻や異母兄弟から送られてくる書類の中でも、特に注意が必要なのが「相続分皆無証明書」または「特別受益証明書」と呼ばれる書式です。
これは本来、生前に被相続人から結婚資金や住宅取得資金などの多額の贈与(特別受益)を受けており、その結果として具体的な相続分がすでにない相続人が、自ら作成して提出する書類です。この証明書があれば、不動産の相続登記において、他の相続人だけで手続を進めることができてしまいます。
しかし、実際には特別受益を受けていないにもかかわらず、この証明書への署名を求められるケースが少なからず存在します。
事実と異なる内容の証明書に署名すると、後になって「特別受益を受けたと認めた」という扱いを受け、遺産を取得する権利を失う可能性があります。心当たりのない贈与を理由にこの書類への署名を求められた場合は、応じる前に立ち止まって内容を精査する必要があります。
遺産を受け取らなくても、借金の負担だけ残ることがあります
家庭裁判所での正式な相続放棄をせず、単に遺産分割協議書で「相続分をゼロとする」という合意にとどまった場合、あなたは遺産を一切受け取らないにもかかわらず、被相続人の借金や連帯保証債務については、法定相続分に応じた負担を免れないことがあります。
これは、遺産分割協議はあくまで相続人同士の間でプラスの財産の分け方を決めるものであり、債権者に対しては効力が及ばないためです。「遺産はいらないから」と安易に協議書へ署名しても、後日、被相続人が借りていた借金の債権者から請求を受け、初めて負債の存在に気づくという事態が起こり得ます。
借金や保証債務の負担を確実に免れたいのであれば、家庭裁判所への相続放棄の申述という正式な手続を経る必要があります。
相続放棄の求めによく言われる主張と、その根本
後妻や異母きょうだいから相続放棄を求められる場面では、いくつかの決まった言い回しが使われる傾向があります。
言葉をそのまま受け止めるのではなく、なぜそのような主張がなされているのかを冷静に理解しておくことが大切です。
その考えの根本の多くは、「あなたにお金を渡したくない。自分の取り分を増やしたい。」これだけです。このために色々な言葉で仕掛けてきます。冷静に対応して、後妻や兄弟からの要望を撥ね除けるかどうか決めてください。
「手続に必要なので、印鑑証明書だけ送ってほしい」
こう言われることがあります。「手間をあなたにかけさせるわけにはいかないからとりあえず印鑑証明書を送って。」
しかし、印鑑証明書は遺産分割協議書や不動産の名義変更、相続放棄の申述など、重要な法的効力を持つ書類に添付される性質のものです。
何のために使われるのかが明確でないまま印鑑証明書を渡してしまうと、後になって、意図しない内容の遺産分割協議書に実印が押された状態で手続が進められてしまう危険があります。使途が明確でない限り、安易に送付すべきではありません。大事な書面、何も見ずにハンコを押さない。
「今日中に押印しないと、手続が進まない」★相続にクーリングオフはありません
こう言われることがあります。しかし、遺産分割や相続放棄の手続には、法律上、その場での即答や即日の押印を義務付ける規定はありません。
消費者法で業者の押し売りには「クーリングオフ」制度があり、ハンコを押したあと契約解除もできますが、相続にクーリングオフはありません。
相続放棄の申述には熟慮期間として相続を知ってから3か月の猶予が設けられていますし、遺産分割協議についても、合意に至るまで時間をかけて構いません。急かされているように感じたときほど、いったん立ち止まり、書類を持ち帰って検討する時間を確保することが重要です。
「ほかの相続人は全員、相続放棄している」
こう言われることがあります。規範的同調圧力です。応じる必要は微塵もありません。そもそもこの説明が事実かどうかは、相手方の言葉だけでは確認のしようがありません。相続放棄の有無は、家庭裁判所に対する「相続放棄申述の有無についての照会」によって確認することができます。
仮に他の相続人が実際に相続放棄をしていたとしても、それによって自分自身の相続分や判断が当然に左右されるものではなく、各相続人は独立して自らの意思で相続放棄をするかどうかを決めることができる立場にあります。
「父の面倒を見たのは私だ」「長年疎遠だった人に権利はない」
こう言われることがあります。父の面倒をしっかり見た人には「寄与分」という制度で個別の相続分を増やすことはできますが、あなたの相続分を消滅させることはできません。
また、長年疎遠であっても相続分がそれだけで少なくなることはありませんし、ましてや消滅することはあり得ません。この点は、親密に暮らしてきた相続人側の代理人に就いている時には、ご依頼者の疎遠だった方への感情を整理し説得する労力を確かに感じる場面ではありますが、法律上、相続分は無くならないので冷静に対応してください。
なぜこんなことを言ってくるのか。
後妻や異母兄弟にあなたの相続分を一方的に消滅させる権利がないからです。このようなときの後妻や異母兄弟が採れる選択肢は、「丁寧にお願いする」か「騙す」か「脅す」しかありません。
騙したり脅したりするつもりはない。ただ、時間がない、他と同調して欲しい、負担はかけないから書面だけくれ、父と全く関わっていかなったじゃないかと、丁寧に相続放棄をお願いしているつもりなのかもしれません。いずれにしても自分に有利なようにあなたに決断させるしか方法がないので四の五の言ってくるわけです。
なぜ、相手方は急いでいるのか
相続放棄や相続分皆無証明書への署名を急かされるとき、その背景には相手方なりの事情があることがほとんどです。相手方が急ぐ理由を理解しておくことは、安易に応じないための判断材料になります。
不動産の名義変更を急ぐ事情がある場合
不動産の売却や担保設定、金融機関からの融資を控えている場合、相続人全員の実印と印鑑証明書がそろわなければ、相続登記も売買契約も進めることができません。
買主との契約日や決済日がすでに決まっている、あるいは融資の実行期限が迫っているといった事情があると、相手方は一日でも早く書類を集めようとします。
このような場合、相手方はあなたの都合よりも自分たちのスケジュールを優先しており、内容を十分に説明しないまま押印だけを求めてくることがあります。急かされているということ自体が、相手方に何らかの締め切りが存在することを示すサインだと考えてください。
生前の預金の動きに触れられたくない場合
被相続人の生前、あるいは死亡直後に多額の預金が引き出されているケースでは、その使途を詳しく調べられることを避けたいという動機が働くことがあります。経験上、単純に預貯金を使い込んでいる傾向があります。
財産目録や通帳の写しを開示しないまま相続放棄や特別受益証明書への署名だけを求めてくる場合、開示すれば使途不明金の存在が明らかになり、後で説明を求められることを警戒している可能性があります。あなたが相続を放棄してしまえば、そもそも通帳の内容を確認する権利自体を失うことになりかねません。財産の全体像が示されないまま急かされている場合は、特に慎重な対応が必要です。
相手方に代理人がついている場合の対応
相手方にすでに弁護士が代理人としてついている場合、書類の作成や連絡の進め方が手続として整えられている分、かえって話が一方的に進んでいくことがあります。
弁護士ですから、「あなたに相続分はない」といった無理のある主張をすることはまずありません。しかし、代理人は依頼者の利益を実現するために動く立場です。遺産を渡したくないという依頼者の意向を受けて、相続放棄を求めること自体は違法ではありませんから、法的に問題のない範囲で、淡々と、しかし強く求め続けてくる弁護士もいます。
弁護士から届いた書面や電話であっても、その内容があなたにとって有利かどうかは別問題です。電話してきた、文書を送付してきた弁護士は相手方のために動いており、あなたの利益を代弁する立場にはありませんし、そもそもあなたの利益を図るとクビです。
そして、この状況で最も消耗するのは、法律論そのものではなく、相手方とやり取りを続けなければならないという負担です。
相手方に代理人がついていると分かった場合は、あなたも自分の代理人を立てるか、少なくとも自分自身で内容を精査する体制を整えてから対応することが望ましいといえます。
弁護士に依頼すれば、相手方や相手方代理人とのやり取りは、すべて弁護士が窓口となって行います。気まずい思いをしながら連絡を受け続ける必要はなくなり、あなたはこれまでどおりの暮らしに戻ることができます。あとは、弁護士からの経過のご報告をお聞きいただきながら、解決を待つ形を実現できます。
相続放棄には「3か月しかない」と急かされたときの正しい理解
起算点は死亡日ではなく、自己のために相続の開始があったことを知った時
相続放棄の期間について「亡くなってから3か月」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。民法915条1項が定める熟慮期間の起算点は、被相続人が死亡した日ではなく、「自己のために相続の開始があったことを知った時」です。
疎遠だった異母きょうだいや、後妻の子との関係が薄かった先妻の子の場合、被相続人が亡くなった事実自体を後から知らされることが少なくありません。この場合、熟慮期間は死亡日からではなく、あなたが自分に相続権があることを実際に認識した時点から起算されます。
さらに、判例上、相続財産がまったく存在しないと信じ、そう信じたことに相当の理由がある場合には、相続財産の全部または一部の存在を認識した時から熟慮期間が起算されるとされています(最高裁昭和59年4月27日判決)。相手方から「もう3か月が過ぎているから今すぐ判断してほしい」と言われても、起算点がいつであるかを冷静に確認する必要があります。
熟慮期間の伸長を家庭裁判所に申し立てられます
財産の全容が把握できず、3か月以内に相続放棄をするか単純承認するかを判断できない場合には、家庭裁判所に対して熟慮期間の伸長を申し立てることができます。これは民法915条1項ただし書に基づく制度で、遺産の構成が複雑な場合や、負債の有無を調査するのに時間がかかる場合に広く利用されています。
申立てが認められれば、当初の3か月からさらに期間が延長され、落ち着いて財産調査を行った上で結論を出すことができます。相手方から急かされているという理由だけで、根拠のない期限に縛られる必要はありません。
財産調査が終わらないまま、結論を出す必要はありません
相続放棄をするかどうかは、遺産の全体像を把握した上で判断すべき事柄です。プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からない状態で、相手方の言葉だけを根拠に結論を出すことは避けるべきです。
不動産の登記事項証明書、預貯金の残高証明書、有価証券の取引残高報告書、借入金に関する契約書など、客観的な資料を確認しないまま「相続放棄した方がよい」と言われても、それが事実かどうかを検証する手段がありません。調査に時間を要する場合は、熟慮期間の伸長を活用しながら、必要な資料が揃うまで判断を保留することができます。
単純承認とみなされる行為への注意(遺品の処分・預金の払戻し)
熟慮期間中であっても、一定の行為を行うと単純承認をしたものとみなされ、後から相続放棄をすることができなくなる場合があります。民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定めています。
具体的には、被相続人名義の預金を払い戻して使用したり、遺品である家財や貴金属を売却したり、不動産の名義変更に関与したりする行為が該当し得ます。なお、判例上、この規定が適用されるためには、相続人が自己のために相続が開始した事実を知りながら処分したことが必要とされています(最高裁昭和42年4月27日判決)。
相手方から「形見分けだから」「先に整理しておいた方がよい」と勧められて遺品の処分に応じてしまうと、意図せず単純承認が成立し、後になって借金の存在が判明しても相続放棄ができなくなる危険があります。判断に迷う行為については、実行する前に確認することが重要です。
相続に強い弁護士があなたの盾になります

後妻や異母兄弟から相続放棄を求められる場面では、相手方との直接のやり取りそのものが精神的な負担になります。感情的な言葉を投げかけられたり、繰り返し連絡が来たりすることで、本来であれば冷静に判断できるはずのことが、判断できなくなってしまうことも少なくありません。
弁護士に依頼することで、相手方との交渉窓口を一本化し、ご自身が直接対応する負担から解放されることができます。
相手方との連絡窓口をすべて引き受けます
弁護士に依頼すると、相手方や相手方の代理人とのやり取りは、すべて弁護士が窓口となって対応します。相手方から直接電話がかかってきたり、自宅に来訪されたりすることがあっても、「今後の連絡は弁護士を通してください」と伝えることができ、以降のやり取りは弁護士が代行します。
これにより、相手方から急かされたり、威圧的な言葉を向けられたりすることがなくなり、精神的な負担が大きく軽減されます。また、書面でのやり取りが基本となるため、後になって「言った」「言わない」の水掛け論になることも防げます。
弁護士費用の目安
相続放棄を選択せずに、ご自身の相続分を受け取ることを決断される場合、弁護士費用が気になります。
当事務所の遺産分割の交渉から解決までにかかる弁護士費用は、次のとおりです。いずれも消費税込みの金額です。
詳しくはこちらのページでも紹介しております。
着手金
| 段階 | 着手金 |
|---|---|
| 遺産分割協議(交渉) | 一律22万円 |
| 遺産分割調停・審判へ移行する場合 | 追加各11万円 |
着手金は、取得が見込まれる金額の多寡にかかわらず一律です。遺産が高額であることを理由に着手金が増えることはありません。
報酬金
実際に得られた経済的利益に、次の割合を乗じた額をいただきます。最低報酬額は55万円です。
| 経済的利益 | 報酬割合 |
|---|---|
| 3,000万円未満の部分 | 11% |
| 3,000万円以上3億円未満の部分 | 6.6% |
日当・実費
出張や出廷が必要となる場合に、日当が発生することがあります。
実費は、郵送費や振込費用など、当事務所が実際に立て替えた金額のみをいただきます。事務手数料や振込手数料といった名目で、別途費用を請求することはありません。
初回のご相談は無料です。ご来所のほか、LINE・メールでのお問い合わせにも対応しております。ご依頼をお受けする際は、遺産の内容や見込まれる解決までの流れを踏まえた見積書を、ご契約前にお示しします。
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