古い借金について、支払督促が確定し、さらに裁判所から財産開示期日呼出状まで届いた場合、

「ここまで手続が進んだら、もう支払うしかない」

と思われるかもしれません。

しかし、そこで改めて確認したいのが、支払督促が申し立てられる前に消滅時効が完成していなかったかという点です。

当事務所では、仮執行宣言付支払督促を債務名義として、債権回収会社から財産開示手続を申し立てられていた事案についてご依頼を受けました。

債権者は、平成30年の仮執行宣言付支払督促を財産開示手続の根拠としていました。

相談の中で、取引経過を確認したところ、その支払督促が申し立てられる前に対象債権の消滅時効が完成していたと判断しました。

そこで、令和8年9月9日、当事務所から債権回収会社に対して消滅時効を援用する通知書を発送しました。

通知書では、財産開示の債務名義となっている仮執行宣言付支払督促を特定し、支払督促手続以前に時効が完成していることを明示しています。

その2日後の9月11日、債権回収会社は財産開示申立てを取り下げました。

正式な取下書: 日付は2026年9月11日、宛先は山口地方裁判所周南支部 御中。
消滅時効援用通知の発送後債権回収会社から裁判所へ提出された財産開示申立ての取下書

取下書には「消滅時効の援用を受けたため」とは記載されていません。そのため、時効援用が取下げの理由だったと断定することはできません。

ただ、

9月9日 消滅時効を援用
↓
9月11日 財産開示申立てを取下げ

という経過になったことは事実です。

今回の事案では、財産開示手続まで進んでいたことが、逆に「その財産開示の前提となっている債権は、本当にまだ請求できるのか」を確認するきっかけになりました。

古い債権の場合、財産開示まで進んでいたとしても、支払いや分割払いを申し出る前に消滅時効を確認する意味があります。

時効完成後に一部弁済をしたり、「少しずつ支払います」などと支払意思を示したりすると、その後の時効援用に影響する場合があるためです。

「支払督促が確定している」「財産開示まで進んでいる」という理由だけで、消滅時効を検討する余地がなくなるとは限りません。

支払督促の申立時期と時効完成時期のどちらが先だったのかを確認することがポイントです。

支払督促が確定した後の消滅時効、確定判決との違い、請求異議の訴えについては、こちらで詳しく解説しています。

→ 「支払督促が確定しても消滅時効を援用できる?仮執行宣言付支払督促と請求異議の訴え」

支払督促が確定しても消滅時効を援用できる?仮執行宣言付支払督促と請求異議の訴え

支払督促が確定していても、消滅時効を主張できる余地があります 裁判所から届いた支払督促をそのままにしていたところ、仮執行宣言付支払督促が確定してしまうことがあり…


author avatar
吉岡 誠
弁護士法人あさかぜ法律事務所代表弁護士 日本交通法学会会員  早稲田大学法学部卒業 首都大学東京(現:東京都立大学)法科大学院修了 テレビ東京 日経スペシャル ガイアの夜明け 出演 ★彡あさかぜの事務所名は夜明けまで駆け抜ける寝台特急あさかぜ号から拝借したものです。「明けない夜はない」この言葉を胸に、私たちはひとりひとりのご依頼者さまに寄り添います。 ご相談でお悩みに耳を傾け、助言を差し上げ、解決への道標を明確にお示しいたします。 フットワーク軽く、敷居を低く、LINEやお電話での相談もお受けしております。どうぞお気軽にお問い合わせください。お待ちしております。